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  • keioguri2015
  • 2023年3月27日
  • 読了時間: 2分

更新日:2023年6月5日

2010リリースされたRyuichi sakamoto playing the piano North America tour の音源が、

演奏した場所ごとにリリースされた時、僕はToronto で演奏した音源を迷わず購入した。

理由はGlan Gould の生まれ故郷であるトロントの街で彼の存在を意識していないはずがないと推測したからだった。

その音源を購入して以降僕は10年近くその音源を1曲目から19曲分 何度も何度も自分の気持ちと向き合うように丁寧に聴くようになっている。


シンプルな主旋律が繰り返されながらそれに添えるコードでストーリーがゆったりと展開していく。

聴くたびに思うのは、

愛情友情のようなドラマチックなことではなく、土の上にポツンと立っているだけのようなシンプル心になる。

ひとりで海外の街を不安な気持ちを抱きながら歩いている時のような、ただ生きてるなというような心持ちにも近いかもしれない。


今から数ヶ月前、

radio Sakamotoというラジオ番組から坂本龍一の日々のスケッチとして録音された音源をひとつづつ流すというとても貴重な放送が繰り返され番組が終わりに向かっていた。

偶然ラジオで聞いた20220207という曲、〈これは収録した日がそのまま何も飾らずにタイトルになっている。〉

そのとんでもなくきれいな世界に仕事をしていた手も頭も一瞬で止まった。

その放送の数日後、「12」というタイトルでパッケージされ音のスケッチが12テイク収録されたアルバムがリリースされた。


僕はその作品を1日の終わりに電気を消して視覚のない状態で眠る時に毎晩聴いている。

今回の作品は2010年に弾いていた曲のようなしっかりした主旋律はない。

だからといってアンビエントとして括れるようなことはできないくらいひとつひとつの音の重なりには突き抜けた強さがある。 不思議なことに、 毎晩新しいかすかな旋律が入ってくるような感覚になる。

記憶したメロディーを毎晩繰り返して聴いてる気がしない。

この作品もすごくシンプルな気持ちにさせてくれる。

ただ土の上に立っているような。


20220207が流れると毎回悪夢を見て目を覚ましてしまうのもまた乙だ。


長いキャリアの中で身についたセンスや技術が呼吸をするようにその日の心持ちと共に放たれたものだと思う。

ここからまた僕は長い時間をかけて、ゆっくりお茶を味わうようにこの作品を聴いてゆらゆら心を委ねていくことになると思う。


何度でも思う。


ほんとうにきれいだ。



oguri kei














































 
 
 

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